でも、私はまだそのことが分かっていなかった。結果をすべて外に求めていた。「同業他社が早くから営業をしていたから」「どうもターゲットにする顧客とは違う気がする」「お金を持っていないところには何を言っても無理」「結局商品力に問題があるんじゃないか」…。そうじゃない。同じサービスを扱っていても、販売に成功する会社はその会社ならではの味付けをしていた。それが「売り」につながり、引いては「信用力」に結び付いていたのではないだろうか。それが分からなったために、私の試行錯誤は続く。
いいかげん電話をかけ続けることに疲れてきた私は、次に電話アポ代行業者にそれを委託するようになった。この段階でまだ1件も売り上げがなかったので、何とかこの状況を打開しようと、電話アポの「プロ」にそのきっかけを作ってもらおうと考えたのだ。その時、きっかけさえつかんでもらえれば、私はその後のアポ先の説得にはまだ自信を持っていた。「自分はチャンスに恵まれていないだけだ」と考えていたのだ。その電話アポ代行業者もネットでアイミツを取る中で選んだのだが、なかなかアポを取るのに苦労していた様子で、事前に契約した数だけのアポを取れない月が続いた。
そんなトラブルはあったものの、その中から良い感触を得られた顧客も何件か出てきた。初めて売り上げが立った時は正直「ホッ」としたが、私が営業を始めて4か月も経っていた。その受注が決まったときは、本当に涙が出るくらいに嬉しかった。1件の売り上げがこんなにしんどいものになるとはまったく思ってもみなかった。それだけ私は当初の見込み違いに苦労した。しかし、その後も何件か受注は獲得したものの、思ったほどに伸びなかった。結局、その電話アポ代行業者にも「数合わせ」のような感じの仕事の仕方が目につくようになり、5か月ほどで契約を解除した。
もう考えられる打つ手をすべて打ち尽くしたと途方に暮れたその頃から、売れない理由が、自分の中にあるのではと考えるようになってきた。結局、何を扱うにしても、自分の強みを持たなければ、顧客に通じないし、顧客もその商品(サービス)を私から買わなければならない理由はない。「何だ、そんなこと当たり前じゃないか」と思われるだろうが、私も理屈としては分かっていたつもりだったが、でも本当には分かっていなかったということだ。それから、私はその商品(サービス)を自分なりにどう味付けしていくのかを考えるようになった。
そのためにまず始めたのが、私のこれまでの人生の振り返りだった。私の生い立ちから、少年時代、青年時代、就職していから今日に至るまで、どう生きてきたのかを、できるだけ細かく思い出し、書き出していった。「私は一体何者なんだろうか」、「何をすることに生きがいを感じるのだろうか」、「本当は何をしたいのか」を見つけるのに、1,2か月も要したろうか。その結果、気付いたのは、「私は情報伝達の分野で人をサポートすることにやりがいを感じ、最も社会にも貢献できるのではないか」ということだった。